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緩和ケアとはなんぞや?


緩和ケアという言葉は広く世間に知られている言葉となりました。しかし、16年前、私たちが開業したころは、緩和ケアという言葉はほとんど知れ渡っておらず、死ぬ間際に受けるケアという暗いイメージで、ごくわずかの方々が知っているだけでした。もちろん、医療関係者はその言葉を知っていましたが、その意味は分かっていなかったと思います。医療関係者が、死ぬ前に受けるケアと思っていたのです。それは、今も続いています。しかし、病院や病院の外で、癌の方が死ぬ前に受けるケアとは、十分ではなく、病院の中では無医村状態でした。もちろん、訪問の依頼を受けて訪れた家の中では、もっと無医村状態で、医療が著しく発達した都会の中でも、まったく医療が介入していない状態でした。

あれから16年経って、緩和ケアという言葉も市民権を得て、訪問をするクリニックも増えました。病院の中にも、緩和ケアチームができました。

ところで、緩和ケアとはなんでしょう。
今でも、病院で抗がん剤をたくさんして、効果がなくなって、どうしようもなくなると、主治医が緩和ケアへ移行してくださいと言い始めます。緩和ケアは、やはり死ぬ前に受けるケア、処置なのでしょうか?

長年、緩和ケアに携わってきましたが、一人ひとり、必要な緩和ケアの内容が異なります。同じ病気でも、死に方は10人いれば10通りです。死に方は、イコール生きてきた人生の集大成ですから、みなが同じであるはずがありません。とすると、そこに寄り添う緩和ケアも皆が同じでいいわけはありません。

死ぬ随分前から必要な方もあります。ほとんどの方が死ぬ直前、1か月とか2,3か月とか短い時間になって、はじめて緩和ケアに関わるのですが、まともに緩和ケアを受けずに亡くなられる方もたくさんおられます。それは、緩和ケアの情報がないからです。死ぬ直前になって、病院が言い出すから、それまでは知らないのです。

でも、実際は、死ぬずっと前から緩和すべき症状があり、心はつらく悩みがたくさんあります。病院に行けば、抗がん剤の話ばかり。心の悩みは誰が聞いてくれるのか、だれが一緒に解決しようとしてくれるのか・・・。いろいろな身体の症状も、詳しく相談する人もいない。

緩和ケアとは、そうした身体の悩み、心の悩みを一緒に解決していくものなのです。だから、決して、死ぬ前だけに必要になるわけではない。本来なら、癌と宣告を受けたそのときから、治療と一緒に並行して始めるべきものです。

緩和ケアの内容も様々です。一般的に、病院のホスピスという所に入ると、積極的治療はできません。すべてをあきらめて死ぬことを待つだけのところです。しかし、誰もが、死ぬ直前まで、生きる希望を持っています。緩和ケアの治療内容もピンからキリまで。本人の希望、家族の希望によって、延命の仕方も千差万別です。病院の治療だけではない。民間の様々な治療にかけてみたい人もいる。最期までその人の人生です。選択肢は10人いれば10通りあるはず。

そんなふうに、最期の最期まで、その人の人生に寄り添って考える、その人とその人の家族にとって、◎で終わるように着地所を探す、それが緩和ケアではないかと思います。

松永 美佳子

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