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抗がん剤と緩和ケア


皆さんは抗がん剤と緩和ケアは相いれないものと思っておられませんか?抗がん剤は癌を治療するもの、緩和ケアはそれが終わってから死ぬまでのケアというのが世の中の方のとらえ方ではないでしょうか。

しかし、それは間違いです。抗がん剤と緩和ケアは平行して行うものです。抗がん剤を受けると、様々な副作用があります。吐き気や発熱、倦怠感、食欲不振など。抗がん剤の副作用が強いと、食事が食べられないまま、痩せて、体力がなくなり、そのまま死んでしまうこともあります。免疫力も低下するため、肺炎や様々な感染症にかかりやすく、それで命を落とすこともあります。

そんな時、副作用を抑える治療は必要ですね。それも緩和ケアです。食べられない時に点滴をすれば、脱水が防がれ、食欲がなければ、点滴で栄養を入れてあげれば、体力も維持できます。しかし、日本では、抗がん剤の副作用にみな苦しみながら、耐えています。吐き気止めくらいは主治医から処方されますが、食べられなくても点滴をすることは少ないです。

緩和ケアとは、抗がん剤などの積極的治療(手術、放射線療法なども含む)以外のすべての治療を意味します。抗がん剤の副作用を治療することも緩和ケア、がんそのものがもたらす症状の治療、例えば、痛みや咳、吐き気、食欲低下、便秘、腹水などを治療することも緩和ケアなのです。ですので、緩和ケアは、積極的治療が終了した後、死ぬまでに受けるケアではないのです。

日本の医療は、がんの発見と積極的治療にはものすごく積極的ですが、緩和ケアは重要視されていません。病院の中で、最近になって、緩和ケアチームというものができ、病院に入院しているがん患者さんの症状に対応していますが、通院している患者さんに対してはほとんど関わりません。いわんや、抗がん剤が終わって病院に来ることが少なくなった末期の患者さんを専門に見る診療科は病院の中にはありません。主治医からは、「そろそろ抗がん剤は終わりですから、どこかで緩和ケアを受けてください」と言われるだけです。どこで受けるのか、患者さんにはわかりません。日本では、こうした状況が長く続いてきましたので、緩和ケアというと、死ぬ前にホスピスなどで受けるものと勘違いされてきたのです。

抗がん剤を選択しなかった患者さんは、さらに相談するところがありません。抗がん剤をしてもしなくても癌は進行することが多いですし、いろいろな症状も出現します。そうした時、相談したり、治療を受けたりする場所は皆無に等しいです。

日本の医療は偏っています。それに気づいて自ら緩和ケアを提供してくれる病院を見つけ出すのは、自分しかありません。病院の主治医についていけば、最後までちゃんと世話してくれると考えるのは間違いです。みなさん、しっかりしましょう。頼りは自分です。
               
松永 美佳子
20201106